【2019年4月12日発行】
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■ 人事労務マガジン/4月号 ■
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【今号の内容】
●雇用関係助成金情報(今回は2つの助成金を紹介します)
●今年度以降の労基署の指導内容について
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1.人材確保等支援助成金(設備改善等支援コース)
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概要
生産性向上に資する設備等を導入することにより、雇用管理改善(賃金アップ等)と生産性向上を実現した企業に対して助成するものです。
主な受給要件
受給するためには、事業主が、次の措置をすることが必要です。
1 雇用管理改善計画期間1年タイプ
(1)計画達成助成
ア 雇用管理改善計画(生産性向上に資する設備等を導入すること、雇用管理改善(賃金アップ等)に取り組むこと等)を作成し、設備等を導入する雇用保険適用事業所を管轄する労働局の認定を受けること。
イ 上記アの雇用管理改善計画に基づき、
A 生産性向上に資する設備等を導入
B 賃金アップの実施(計画前と比べて2%以上) 等
(2)上乗せ助成
上記(1)の支給を受け、
A 引き続き生産性向上に資する設備等を活用していること。
B 賃金アップ(計画前と比べて6%以上)
C 生産性の向上(設備等の導入日の属する会計年度の前年度とその3年度後の生産性を比較して、生産性の伸びが6%以上であること。)等
2 雇用管理改善計画期間3年タイプ
(1)計画達成助成(1回目)
ア 雇用管理改善計画(生産性向上に資する設備等を導入すること、雇用管理改善(賃金アップ等)に取り組むこと等)を作成し、設備等を導入する雇用保険適用事業所を管轄する労働局の認定をうけること。
イ 上記アの雇用管理改善計画に基づき、
A 生産性向上に資する設備等を導入
B 賃金アップ(計画前と比べて2%以上)
C 生産性の向上(設備等の導入日の属する会計年度の前年度とその1年度後の生産性を比較して、生産性の伸びが0%以上であること。)等
(2)計画達成助成(2回目)
上記(1)の支給を受け
A 引き続き生産性向上に資する設備等を活用していること。
B 賃金アップ(計画前と比べて4%以上)
C 生産性の向上(設備等の導入日の属する会計年度の前年度とその2年度後の生産性を比較して、生産性の伸びが2%以上であること。) 等
(3) 目標達成時助成
上記(2)の支給を受け
A 引き続き生産性向上に資する設備等を活用していること。
B 賃金アップ(計画前と比べて6%以上)
C 生産性の向上(設備等の導入日の属する会計年度の前年度とその3年度後の生産性を比較して、生産性の伸びが6%以上であること。) 等
労働者の適切な雇用管理に努める事業主であること、同一事業主の全ての雇用保険適用事業所において事業主都合による解雇等していないこと、各計画期間中の離職率が30%以下であること等の要件があります。
受給額
本助成金は、下表の額が支給されます。
計画期間 |
設備導入費用 |
計画達成助成 |
計画達成助成 |
目標達成時助成 |
総額 |
1年コース |
175万円以上1,000万円未満 |
50万円 |
- |
80万円 |
130万円 |
3年コース |
240万円以上5,000万円未満 |
50万円 |
50万円 |
80万円 |
180万円 |
|
5,000万円以上1億円以上 |
50万円 |
75万円 |
100万円 |
225万円 |
|
1億円以上 |
100万円 |
150万円 |
200万円 |
450万円 |
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2.キャリアアップ助成金 「短時間労働者労働時間延長コース」
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雇用する有期契約労働者等について、週所定労働時間を5時間以上延長または労働者の手取り収入が減少しないように週所定労働時間を1時間以上5時間未満延長し、新たに社会保険に適用させることに加えて賃金規定等改定コースまたは選択的適用拡大導入時処遇改善コースを実施した場合に助成します。
①短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し新たに社会保険に適用した場合1人当たり22万5,000円<28万4,000円>(16万9,000円<21万3,000円>)
②労働者の手取り収入が減少しないように週所定労働時間を延長し、新たに社会保険に適用させることに加えて、賃金規定等改定コースまたは選択的適用拡大導入時処遇改善コースを実施した場合
1時間以上2時間未満:1人当たり45,000円<57,000円>(34,000円<43,000円>)
2時間以上3時間未満:1人当たり90,000円<11万4,000円>(68,000円<86,000円>)
3時間以上4時間未満:1人当たり13万5,000円<17万円>(10万1,000円<12万8,000円>)
4時間以上5時間未満:1人当たり18万円<22万7,000円>(13万5,000円<17万円>)
<①と②合わせて、1年度1事業所当たり支給申請上限人数45人まで>
※令和2年3月31日までの間、上限人数を緩和しています。
※1①については令和2年3月31日までの間、支給額を増額しています。
※2②については延長時間数に応じて以下のとおり延長時に基本給を昇給することで、手取り収入が減少していないと
判断します。
1時間以上2時間未満:13%以上昇給2時間以上3時間未満:8%以上昇給
3時間以上4時間未満:3%以上昇給4時間以上5時間未満:2%以上昇給
※3②については令和2年3月31日までの暫定措置となります。
※4適用拡大対象企業(特定適用事業所)については、平成28年10月1日付の契約(適用)まで旧制度を利用することができます。
[旧制度] 短時間労働者の週所定労働時間を25時間未満から30時間以上に延長し、新たに社会保険を適用した場合
:1人当たり20万円(15万円)
対象となる労働者
○次の①から⑤までのすべてに該当する労働者が対象です。
① 支給対象事業主に雇用される有期契約労働者等であること。
② 次の(1)から(5)までのいずれかに該当する労働者であること。
(1)週所定労働時間を5時間以上延長した日の前日から起算して過去6か月以上の期間継続して、有期契約労働者等として雇用された者
(2)週所定労働時間を1時間以上2時間未満延長した日の前日から起算して過去6か月以上の期間継続して、有期契約労働者等として雇用された者であり、かつ週所定労働時間の延長後の基本給が延長前の基本給に比べて13%以上昇給している者
(3)週所定労働時間を2時間以上3時間未満延長した日の前日から起算して過去6か月以上の期間継続して、有期契約労働者等として雇用された者であり、かつ週所定労働時間の延長後の基本給が延長前の基本給に比べて8%以上昇給している者
(4)週所定労働時間を3時間以上4時間未満延長した日の前日から起算して過去6か月以上の期間継続して、有期契約労働者等として雇用された者であり、かつ週所定労働時間の延長後の基本給が延長前の基本給に比べて3%以上昇給している者
(5)週所定労働時間を4時間以上5時間未満延長した日の前日から起算して過去6か月以上の期間継続して、有期契約労働者等として雇用された者であり、かつ週所定労働時間の延長後の基本給が延長前の基本給に比べて2%以上昇給している者
③週所定労働時間を延長した日の前日から起算して過去6か月間、社会保険の適用要件を満たしていなかった者であること。
④週所定労働時間の延長を行った事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族※1以外の者であること。
※1 民法(明治29年法律第89号)第725条第1号に規定する血族のうち3親等以内の者、同条第2号に規定する配偶者及び同条第3号に規定する姻族をいう。
⑤支給申請日において離職※2していない者であること。
※2本人の都合による離職および天災その他やむを得ない理由のために事業の継続が困難となったことまたは本人の責めに帰すべき理由による解雇を除く。
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「当面の労働時間対策の具体的推進について」
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2019年4月からの働き方改革関連法の施行に伴い、今後、企業に対し労働局や労働基準監督署から法改正の内容の周知徹底や、改正点に関わる指導が多く行われることが予想されます。4月1日には厚生労働省労働基準局長および
厚生労働省雇用環境・均等局長から、都道府県労働局長に対し「当面の労働時間対策の具体的推進について」(平成31年4月1日基発0401第25号・雇均発0401第39号)が通達されており、この通達により労働局や労働基準監督署に
対し当面の労働時間対策の具体的な進め方を示しています。
通達の中で注目すべき点はいくつかあるのですが、時間外労働の削減の一部を確認すると、「時間外・休日労働協定の適正化」として以下のように示されています。
時間外・休日労働協定に関する労働基準法等の関係法令(以下「関係法令」という。)が労使当事者に遵守されるよう、労使の自主的な取組を促進する観点からもあらゆる機会を通じて周知及び指導を行うこと。
また、時間外・休日労働協定届が所轄労働基準監督署長に届け出られた場合には、関係法令等の適用関係を踏まえ、当該協定届の内容について必要な指導を行うこと。
特に、限度時間を超えて労働させることができる場合について、「業務の都合上必要な場合」や「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものと認められる内容を協定している場合は、関係法令等 の周知を行うとともに、当該協定の適正化について必要な指導を行うこと。
さらに、時間外・休日労働協定の締結当事者である労働者の過半数代表者については、職制上の地位及び選出方法が労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第6条の2第1項に基づく要件を充足していることについて確認 を徹底すること。
その他、努力義務ではあるものの「勤務間インターバル制度の導入促進」も「助成金の活用促進や、導入している企業の好事例の周知等、制度導入に向けた取組を推進すること」とされています。
2019年4月に施行された部分に関しては、時間外・休日労働数の管理や年次有給休暇の取得状況の確認等、施行後にもしっかりとした継続的な運用が求められる事項が相当多くなっています。今後、運用面についての管理も しっかりと行っていきましょう。
特に、有給休暇については、
平成31 年4月1日から、すべての事業場において、年次有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類(以下「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、3年間保存しなけ
ればならないことから、年次有給休暇管理簿が適正に作成、保存されるよう、必要な指導を行うこと。
さらに、業務量を正確に把握し、個人別年次有給休暇取得計画表の作成、年次有給休暇の完全取得に向けた取得率の目標設定の検討及び業務体制の整備、取得状況の把握等を行うよう必要な指導を行うこと
等が挙げられております。
平成31 年4月1日から施行されている項目には特に注意が必要です。
以上。