2020年6月9日発行】
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■ 人事労務マガジン/6月号 ■
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【今号の内容】:●身元保証契約の見直し
●今年の算定基礎届について
●パワーハラスメント防止措置が事業主の義務となりました
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身元保証契約の見直し
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●コロナ騒動の間に民法の改正が施行されました。お客様から身元保証契約についてのお問い合わせがありましたので、今回、改めてご連絡させて頂きます。
「民法の一部を改正する法律」が2020年4月1日から施行されました。
その中で人事労務分野において影響がある事項のひとつに「身元保証」があります。雇用契約の際に提出してもらう身元保証には、主に3つの役割があると思われます。
・雇い入れる者の経歴などに問題がなく、従業員として適性を有する人物であることを身元保証人に保証させる役割
・雇い入れる者が将来的に会社に損害を与えた場合、身元保証人がその損害賠償義務を保証することを約束する役割
・実務的に多いものとして、緊急時の連絡先としての役割
企業においては、身元保証契約を結ぶことにより、身元保証人による当該従業員の指導・監督を期待するとともに、将来、その従業員の行為によって損害をこうむった場合に、従業員本人はもちろん身元保証人に対しても連帯して損害を賠償させることができ、そのため、採用に当たり身元保証人を立てることは一般に広くおこなわれているものです。
身元保証については、身元保証人の責任が重くなりすぎることのないよう、「身元保証に関する法律」により、以下が規定されています。
(1)保証期間(第1条及び第2条)
定めがあれば5年が最長、なければ3年。自動更新の規定は無効。更新時もその後の期間は最長5年。
(2)使用者から身元保証人への通知義務(第3条)
労働者本人に業務上不適任又は不誠実な事跡があり、身元保証人がその責任を問われるおそれがある場合や、人事異動などで保証人の責任が増加する場合、使用者は身元保証人に通知する必要がある。
(3)身元保証人の解除権(第4条)
(2)が規定する「使用者から身元保証人への通知」後、身元保証人は将来へ向けて身元保証の契約を解除することができる。
(4)保証責任の限度等(第5条)
身元保証人の損害賠償責任は、使用者の過失の有無、身元保証を引き受けるに至った経緯、身元保証人の注意の程度、労働者本人の任務・身上の変化等一切の事情を考慮して裁判所が決定する。
(5)強行法規
この法律に反して身元保証人に不利な特約をしても無効となる。
というものです。
それでは、民法改正によってどのような影響があるのでしょうか。民法の「保証」に関する規定の改正により、4月からは身元保証人の賠償額の上限(極度額)を定めなければならなくなりました。
★何が変わる? どうしたらいい?
2020年4月からは、身元保証人の賠償額の上限(極度額)を決めないといけません。つまり、企業と身元保証人の間で、賠償額の合意が必要になるのです。
今後、上限(極度額)の記載のない身元保証書は、その契約自体が無効になります。
身元保証書の取り扱いの変更は、2020年4月入社の従業員から対応が必要です。企業としての対応は、以下の2つのパターンのどれかになるでしょう。
①賠償額の上限を記載する運用に変更する
②身元保証人の制度を廃止する
★改めて、社内における「身元保証人制度」の在り方を考える
現状、御社における「身元保証人制度」は機能しているでしょうか?入社時に身元保証人を立ててもらっているが「実際に賠償請求した実績がない」「念のため、一応、といった位置付け」等、制度自体が
形骸化している事例は珍しくありません。このようなケースでは、このたびの改正民法対応の一環として、改めて身元保証制度の在り方自体を見直してみるべきです。そもそも本当に必要な制度なのか、身
元保証人に何を求めるか等を明らかにすることで、実態に即した制度構築につなげることができるでしょう。
この法改正を機に、「身元保証人は、本当に必要なのか?」「身元保証書を提出させる目的は?」など、根本的な部分を見直してみる機会にしてはいかがでしょうか。
★上限額(極度額)はどうすればいい?
「賠償の上限額(極度額)を記載する」と決めた場合、その金額はどう決めるべきでしょう。
上限額(極度額)は法律では決まっておらず、企業側で自由に設定できます。極論ですが「1億円」と身元保証書に記載することも可能ですが、実際に「1億円」と書かれた身元保証書にサインをしてくれる人を探すのは困難ではないでしょうか。
とはいえ10万円程度の少額だと、「そもそも身元保証をしてもらう必要があるのか?」という疑問も出てきますね。100万円とか、もしくは月給の6ヶ月分など、支払いが可能で、かつ少額すぎない、現実味のある金額にする必要があるでしょう。
高額・少額のどちらにしても、賠償額が明確に記載されるため、身元保証人に「どのようなときに請求されるのか」「どのようなときに契約解除できるのか」などを説明する必要がでてきます。
現状は、企業が保証人にその説明をしているケースはほぼないと思われますが、今後は企業側から「責任範囲と契約解除」について説明書を提示する方がよいでしょう。
★最終的には裁判所が総合判断します。
「身元保証に関する法律」にあるように、最終的には一切の事情を考慮して裁判所が決定します。
実際の過去の判決では、多くても損害額の2~4割程度を身元保証人が負担するのが一般的のようです。
また最近の企業における損害賠償は、個人情報の流出や、データの管理ミスなど、情報系が多いのも特徴。損害賠償は決して「モノを壊した」だけにはとどまらないため、身元保証人への説明が今まで以上に必要となります。
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今年の算定基礎届について
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企業事務において、例年6月、7月は労働保険申告書や社会保険算定基礎届の提出があります。
今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、行政から様々な休業要請が出ております。
従業員については、休業手当の支払、小学校等の保護者に対する特別有給休暇取得要請など、
また、企業によっては、特別ボーナスの支給などを実施した会社もあります。
これらの支払った賃金が労働保険申告書や社会保険算定基礎届の計算においてどう取り扱われるのか、報酬や低額な休職給になるのかどうかなども全く不明です。
先日も筆者が行政関係当局に問い合わせをした際はお話にならないお粗末な対応でした。新型コロナウイルスのせいで低額な賃金しかもらえないのに、その月の報酬を除外して(しかもこれからも低額な報酬が続く恐れもありながら)、報酬を決定するなど不合理ではないでしょうか。
近々、厚労省から、小学校等の保護者に対する特別有給休暇の取扱いなどに関して、何らかの通知が出るようですので、情報には注意し、社会保険算定基礎届を提出してください。
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パワーハラスメント防止措置が事業主の義務となりました
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2020年(令和2年)6月1日から、
職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!
★パワーハラスメント防止措置が事業主の義務※となりました!
※中小事業主は、2022年(令和4年)4月1日から義務化されます(それまでは努力義務)。早めの対応をお願いします!
職場における「パワーハラスメント」とは、職場において行われる
①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるものであり、
①~③までの要素を全て満たすものをいいます。
※客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。
★ 職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置
事業主は、以下の措置を必ず講じなければなりません(義務)。
◆事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
①職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、
労働者に周知・啓発すること
②行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、
労働者に周知・啓発すること
◆相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
◆職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
➄事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと(注1)
⑦事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと(注1)
⑧再発防止に向けた措置を講ずること(注2)
(注1)事実確認ができた場合(注2)事実確認ができなかった場合も同様
◆そのほか併せて講ずべき措置
⑨相談者・行為者等のプライバシー(注3)を保護するために必要な措置を講じ、
その旨労働者に周知すること
(注3)性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含む
⑩相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、
労働者に周知・啓発すること
★ 事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
事業主は、労働者が職場におけるパワーハラスメントについての相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いをすることは、法律上禁止されています。
今月は、以上です。
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■ 人事労務マガジン/6月号 ■
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【今号の内容】:●身元保証契約の見直し
●今年の算定基礎届について
●パワーハラスメント防止措置が事業主の義務となりました
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身元保証契約の見直し
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●コロナ騒動の間に民法の改正が施行されました。お客様から身元保証契約についてのお問い合わせがありましたので、今回、改めてご連絡させて頂きます。
「民法の一部を改正する法律」が2020年4月1日から施行されました。
その中で人事労務分野において影響がある事項のひとつに「身元保証」があります。雇用契約の際に提出してもらう身元保証には、主に3つの役割があると思われます。
・雇い入れる者の経歴などに問題がなく、従業員として適性を有する人物であることを身元保証人に保証させる役割
・雇い入れる者が将来的に会社に損害を与えた場合、身元保証人がその損害賠償義務を保証することを約束する役割
・実務的に多いものとして、緊急時の連絡先としての役割
企業においては、身元保証契約を結ぶことにより、身元保証人による当該従業員の指導・監督を期待するとともに、将来、その従業員の行為によって損害をこうむった場合に、従業員本人はもちろん身元保証人に対しても連帯して損害を賠償させることができ、そのため、採用に当たり身元保証人を立てることは一般に広くおこなわれているものです。
身元保証については、身元保証人の責任が重くなりすぎることのないよう、「身元保証に関する法律」により、以下が規定されています。
(1)保証期間(第1条及び第2条)
定めがあれば5年が最長、なければ3年。自動更新の規定は無効。更新時もその後の期間は最長5年。
(2)使用者から身元保証人への通知義務(第3条)
労働者本人に業務上不適任又は不誠実な事跡があり、身元保証人がその責任を問われるおそれがある場合や、人事異動などで保証人の責任が増加する場合、使用者は身元保証人に通知する必要がある。
(3)身元保証人の解除権(第4条)
(2)が規定する「使用者から身元保証人への通知」後、身元保証人は将来へ向けて身元保証の契約を解除することができる。
(4)保証責任の限度等(第5条)
身元保証人の損害賠償責任は、使用者の過失の有無、身元保証を引き受けるに至った経緯、身元保証人の注意の程度、労働者本人の任務・身上の変化等一切の事情を考慮して裁判所が決定する。
(5)強行法規
この法律に反して身元保証人に不利な特約をしても無効となる。
というものです。
それでは、民法改正によってどのような影響があるのでしょうか。民法の「保証」に関する規定の改正により、4月からは身元保証人の賠償額の上限(極度額)を定めなければならなくなりました。
★何が変わる? どうしたらいい?2020年4月からは、身元保証人の賠償額の上限(極度額)を決めないといけません。つまり、企業と身元保証人の間で、賠償額の合意が必要になるのです。
今後、上限(極度額)の記載のない身元保証書は、その契約自体が無効になります。
身元保証書の取り扱いの変更は、2020年4月入社の従業員から対応が必要です。企業としての対応は、以下の2つのパターンのどれかになるでしょう。
①賠償額の上限を記載する運用に変更する
②身元保証人の制度を廃止する
★改めて、社内における「身元保証人制度」の在り方を考える
現状、御社における「身元保証人制度」は機能しているでしょうか?入社時に身元保証人を立ててもらっているが「実際に賠償請求した実績がない」「念のため、一応、といった位置付け」等、制度自体が
形骸化している事例は珍しくありません。このようなケースでは、このたびの改正民法対応の一環として、改めて身元保証制度の在り方自体を見直してみるべきです。そもそも本当に必要な制度なのか、身
元保証人に何を求めるか等を明らかにすることで、実態に即した制度構築につなげることができるでしょう。
この法改正を機に、「身元保証人は、本当に必要なのか?」「身元保証書を提出させる目的は?」など、根本的な部分を見直してみる機会にしてはいかがでしょうか。
★上限額(極度額)はどうすればいい?
「賠償の上限額(極度額)を記載する」と決めた場合、その金額はどう決めるべきでしょう。
上限額(極度額)は法律では決まっておらず、企業側で自由に設定できます。極論ですが「1億円」と身元保証書に記載することも可能ですが、実際に「1億円」と書かれた身元保証書にサインをしてくれる人を探すのは困難ではないでしょうか。
とはいえ10万円程度の少額だと、「そもそも身元保証をしてもらう必要があるのか?」という疑問も出てきますね。100万円とか、もしくは月給の6ヶ月分など、支払いが可能で、かつ少額すぎない、現実味のある金額にする必要があるでしょう。
高額・少額のどちらにしても、賠償額が明確に記載されるため、身元保証人に「どのようなときに請求されるのか」「どのようなときに契約解除できるのか」などを説明する必要がでてきます。
現状は、企業が保証人にその説明をしているケースはほぼないと思われますが、今後は企業側から「責任範囲と契約解除」について説明書を提示する方がよいでしょう。
★最終的には裁判所が総合判断します。
「身元保証に関する法律」にあるように、最終的には一切の事情を考慮して裁判所が決定します。
実際の過去の判決では、多くても損害額の2~4割程度を身元保証人が負担するのが一般的のようです。
また最近の企業における損害賠償は、個人情報の流出や、データの管理ミスなど、情報系が多いのも特徴。損害賠償は決して「モノを壊した」だけにはとどまらないため、身元保証人への説明が今まで以上に必要となります。
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今年の算定基礎届について━━━━━━━━━━━━━━━━
企業事務において、例年6月、7月は労働保険申告書や社会保険算定基礎届の提出があります。
今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、行政から様々な休業要請が出ております。
従業員については、休業手当の支払、小学校等の保護者に対する特別有給休暇取得要請など、
また、企業によっては、特別ボーナスの支給などを実施した会社もあります。
これらの支払った賃金が労働保険申告書や社会保険算定基礎届の計算においてどう取り扱われるのか、報酬や低額な休職給になるのかどうかなども全く不明です。
先日も筆者が行政関係当局に問い合わせをした際はお話にならないお粗末な対応でした。新型コロナウイルスのせいで低額な賃金しかもらえないのに、その月の報酬を除外して(しかもこれからも低額な報酬が続く恐れもありながら)、報酬を決定するなど不合理ではないでしょうか。
近々、厚労省から、小学校等の保護者に対する特別有給休暇の取扱いなどに関して、何らかの通知が出るようですので、情報には注意し、社会保険算定基礎届を提出してください。
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2020年(令和2年)6月1日から、
職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!
★パワーハラスメント防止措置が事業主の義務※となりました!
※中小事業主は、2022年(令和4年)4月1日から義務化されます(それまでは努力義務)。早めの対応をお願いします!
職場における「パワーハラスメント」とは、職場において行われる
①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるものであり、
①~③までの要素を全て満たすものをいいます。
※客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。
★ 職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置
事業主は、以下の措置を必ず講じなければなりません(義務)。
◆事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
①職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、
労働者に周知・啓発すること
②行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、
労働者に周知・啓発すること
◆相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
◆職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
➄事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと(注1)
⑦事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと(注1)
⑧再発防止に向けた措置を講ずること(注2)
(注1)事実確認ができた場合(注2)事実確認ができなかった場合も同様
◆そのほか併せて講ずべき措置
⑨相談者・行為者等のプライバシー(注3)を保護するために必要な措置を講じ、
その旨労働者に周知すること
(注3)性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含む
⑩相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、
労働者に周知・啓発すること
★ 事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
事業主は、労働者が職場におけるパワーハラスメントについての相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いをすることは、法律上禁止されています。
今月は、以上です。